tascoTitanのブログ

最高のカスタムVSR-10を目指して

KING CRAFT RIFLE様の記事から(ストック強度・締め付けトルクのスイートスポット・ペディング等)

King Craft Inc
Classic Rifle & Target Rifle.
427-1 Tonogaya Ohaza Mizuho-machi Nishitama-gun Tokyo Japan. 190-1212

 

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〈 最強アルミ合金ANP89をインサートしたハイブリッド・アンシュッツ1413ストック〉

○○会長と一緒に来社された○○県ラ協会のシニア・シューター様から次のようなご相談を受けました。「私の長年愛用しているスーパーマッチ銃身付きアンシュッツ1413の件ですが、何故だか、最近、いまヒトツ纏(まと)まらなくなったように思います。ベディング加工を施した20数年前は、グルーピングも小さくなり、県で1番2番を争うライフルでした。ところが、最近はフライヤーが出て、命中精度も冴えないのです。○○歳を過ぎ、年齢から来る自己のミスショットなのか? はたまた、鉄砲に問題があるのか? 私自身は、まだまだ若い人には負けないで撃てると、気合も十分なのですが。出来れば私のアンシュッツも○○会長と同じ様に見て頂けませんか」との事でした。

シニア様のアンシュッツ1413を拝見しました。バレルドアクションをストックから外して見たら、予想もしていない事態になっていました。

彼此20年以上経ったのか、厚さ3mmのベディング面は、機関部との機密性も整合性も取れておらず。もっと眼を凝らして観察すると、ベディング面に縦長クラックを発見しました。更に詳しく調べていくと、ストックのクルミ材が、ベディング面と一緒になって、縦に15cmほど割れているではないですか。それも縦に2本の筋。ストックの割れは、2本並列になって、縦に上下の貫通割れを起こしている。ストック底面が中心から3分割され、放っておけばストック全体に波及しそう。何故、どうすれば、こんなに酷い割れ方をするのだろうか? 尋ねてみた。

シニア様が仰るには「このライフルは、1度も落下させた事は無く。恐らく、トルクレンチでキツく締め過ぎた事が原因だと思います。アルミストックは5N/m~6N/m。ウッドストックは3N/m~4N/mの締め付けトルクと聞いています。しかし、今ひとつグルーピングが悪いので、それ以上のトルクで締め付ければグルーピングは、もっと小さくなるのかも知れない。そう考え、アルミストックの締め付けトルクである5N/m~6N/mで締めました。それでもグルーピングは小さくならない。7N/mのトルクを掛ければ、ひょっとしたらグルーピングは小さくなるのかもしれないと思い、何回も試して撃ちました。恐らく6N/mから7N/mと、クルミストックに過剰なトルクを掛けた事が問題で、その結果、割れたと思います」との事だった。

……………………

今から35年前の1982年、オリンピックチャンピオンのラニー・バッシャムからライフル機関部を締め付けるメインスクリューは、空転式トルクレンチによるトルク管理を行うよう、指導を受けた。バッシャムが使用していた空転式トルクレンチは、日本製・中村製作所が作るKANONトルクドライバーだった。「クルミストックなら30lb/inch〜60lb/inchの範囲で締め付けること。100lb/inch以上のトルクを掛ければ、安物のウッドストックは割れる。出来れば、25lb/inch辺りから、1ポンドづつ、トルクを上げていけば、グルーピングが小さくなるスイートスポットが発見できる」と、バッシャムから教えられた。現代のトルクレンチなら1.5N/mから3N/mの範囲。かなり弱いトルクだ。断っておくが、ラニー・バッシャム愛用のワルサーGX1クルミストックは、ビル・ワイズマンが特別製作した強靭なハイブリッド・ストック(アルミ合金インサートストック)であり、何もチューニングしていないクルミストックとは違う。

ベディング加工を行えばウッドストックは頑強になると思われているが。ベディング加工は、ストックに溶剤を流し込み、バレルドアクションを水平・垂直・センターで正しく設置し、1万分の1mmまで機密性をあげて、グルーピングを向上させることに貢献する技術。ベディング加工がウッドストックの強度を飛躍的に上げることなど無い。bedding加工は、英字の如く、ベッドに寝かせる密着性技術で有り、1970年初頭からアメリカのベンチレストシュター達によって広まった。このベディング技術の起源は、ベトナム戦で使用した海兵隊スナイパーライフルM40A1のバレルドアクションをベディングした事が世界で最初だったとワイズマンから聞いた。ベディング技術も軍用からのフィードバックだったのだ。

アメリカマークスマンシップユニット(アメリカ射撃技術部隊)は、1974年、M40A1の開発メンバーである海兵隊ガンスミスのビル・ワイズマンをカスタムファイヤーアームズショップの技術指揮官として招き入れた。

1974年からワイズマンの指導によって、全てのターゲット ライフル、全ての散弾銃、そしてフリーピストルのグリップに至るまでベディング加工が施される。

1976年モントリオールオリンピックで優勝したラニー・バッシャムや、同点2位になったマーガレット・マードックのライフルは、世界で初めて、10mm肉厚の航空機アルミA2024(超ジュラルミン)フラットバーがストック底面にインサートされ、ストック強度を上げた。此処に世界初、ハイブリッド・ターゲットストックが登場した。

また、1976年モントリオールオリンピック・トラップ競技で優勝したドナルド・ハルデマンのトラップ銃も、ワイズマンによって先台・元台がベディング加工されていた。

1987年にイギリス人オリンピックチャンピオンのマルコム・クーパーから購入したアキュラシー・インターナショナル308winターゲット・ライフルは、ウッドストックに10mm肉厚の航空機アルミA2024(超ジュラルミン)が内蔵され、1丁ずつ丁寧にベディングされて日本に到着した。また、アキュラシー・インターナショナル・スナイパーライフルは、機関部底面がアルミフルフレームにベディング剤で接着され、フレームから機関部は外れない仕組みに作られていた。

……………………

シニア様の割れたアンシュッツ1413ストックは、世界最高強度のANP89超超アルミ合金のフラットバーをストック底面にインサートする事にした。

先ずは、ストックにインサートしてある鉄リコイルラグを除去。リコイルラグは、最強チタンの6AL4Vチタンで作り直した。

アンシュッツストックの割れた部分をフライス盤で除去し、整形が終わったANP89を接着。更にストック側面からマグナムクロスボルトで固定して、ガッチリと剛性を上げた。

また、必要以上にトルクを掛けて、トリガーガードや座金がストックに沈み込まないように、ピラーを入れた。

ハイブリッドストックに生まれ変わったアンシュッツ1413は、新品で購入した時よりも、よりいっそう頑丈に仕上げる事が出来た。これなら6N/mや7N/mで締め付けても、ストックが再び割れる心配はない。しかしながら、強度剛性を上げたハイブリッドストックの場合、案外、3N/m程の弱いトルクからグルーピングは小さくなるのでした。

アメリカチームは現在でもウッドストックに拘る選手が多い。アメリカフォートベニングのカスタムファイヤーアームズショップで製作されるウッドストックには、今でも10mm肉厚のアルミ合金がインサートしてある。見た目は普通のアンシュッツウッドストックだが、本当はA7075-T6アルミ合金をインサートした、ハイブリッドストックなのでした。

以上。

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本当に、勉強になります。

VSR-10でも、機関部をストックに取り付ける時の2本のスクリューの締め付けには、気を使います。

特に「ウッドストック」では、締めすぎると「操作不能」になったりします。機関部が真っすぐな状態では無くなるんでしょうね。ナカヤさんのウッドストックは精度が素晴らしく、オイルステインのぼこぼこしているところを、#1000のペーパーで軽くなでてから組み込むと、バレルドアクションが「スーー」と降りていき、ピタッと止まって動きません。2本のスクリューを締めたり緩めたりして、コッキング・発射動作が気持ちよくなるところをさがします。丈夫で振動も吸収してくれるブナ材のストックに頼って、機関部の性能を引き上げてもらっている感覚です。「ふんわり、ぴったり」載せる。

純正のプラストックは手で握れば簡単に撓みますから、制振材やゴム板を貼ったり、反発力のあるウレタンスポンジで内側から支えたり、埋められる空間を出来るだけ埋めて、強度を補い、振動も減らしておくのが大事だと考えています。

バレルドアクションの剛性も加工で出来るだけ上げておいて、「スッと、、」載せて「チョイと」締める。

そんな感じでしょうか。

 

VSR-10のチューニングで最重要なのは、

「全体の剛性を上げる・不要な振動を消す」と、

「空気の流れの乱れを無くす(エアソフトガンですから)」の2点だとつくづく感じています。