tascoTitanのブログ

最高のカスタムVSR-10を目指して

頬付け(チークピース調整)とフライヤーの関係「KING CRAFT RIFLE様」の記事から

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2004年、アテネ・オリンピック50m prone 60 shots 金メダルのMatthew Emmons(マテウー・エモンズ)選手。ワルサーLG400にプレサイス・チークピースをスワップチューニングした。」


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2016年、リオ・オリンピック前にプラスチック製チークピースから木製チークピースへ変更した。」

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50m伏射世界ランキング1位のアメリカ陸軍Micheal Mcphail(マイケル・マクファイル)選手とアメリカ陸軍カスタムショップで製作されたアンシュッツ1813ライフル。」

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マイケル・マクファィル選手は、リオ・オリンピック直前に、アンシュッツ1813ストックに、プレサイス・チークピースをスワップチューニングした。」

                                        

プレサイス・チークピースのスワップ・チューニング〉

1年前、ワルサーLGエアライフルへの、プレサイス・チークピースのスワップ・チューニングを行なった。

このスワップ・チューニングは、日本ナショナルチームコーチであるMr. Thomas Farnik(トーマス・ファーニック氏)からの提案によるもので「現在、最も完成度の高いアンシュッツ・プレサイス・チークピースを流用すれば、ヨリ精密な頬付けと照準が完成する。チークピースの上下左右への僅かな動きを、据銃フォームのまま0.01mm単位で微調整できるアジャスタブル機構は、プレサイスが飛び抜けて優秀である。現在、アメリカのトップシューターであるエモンズ選手やマクファイル選手等は、リオ・オリンピック前にプレサイス・チークピースにスワップ・チューニングした」というものだった。

私も30年前迄は、日本代表選手として14ケ国へ派遣され、7個の金銀銅メダルを獲得した実績があるので、ファーニック代表コーチの指摘は、そのとうりだと思う。

特に10.9点のセンターを連続して獲得する為には、ライフル照準こそ、最後の鬼門になる。

どんなに優秀なコーチでも、試合に於ける選手の照準錯覚による誤射は、見抜けない。これは、網膜上に映るmonocular cues(単眼手がかり)のズレが原因している。

本来、人間は、双眼による二点間測距binocular cuesでパララックス=視差(立体感や奥行き)補正をして、正確な距離を測定する能力がある。

しかし、ライフル射撃ピストル射撃は、monocular cues(単眼手がかり)の競技である為、頭部や眼球の位置が一定しなければ、毎回、微量な狂いが生じると、monocular cues(単眼手がかり)のズレが起きる。

私は、自分自身が代表選手として苦労してきたので、如何に身体にフィットしたストック、特にチークピースの構造によってmonocular cues(単眼手がかり)のズレを無くす事が出来ると、深く理解しているつもりである。おそらくファーニック代表コーチも、オーストリア代表選手として活躍された経験から、射手の内的姿勢、特にチークピース不適合によるmonocular cues(単眼手がかり)のズレは、誰よりも、よく理解されているのだろう。

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現在、エアーライフル競技は、ワルサーLG400を使用する選手が、ワールドカップ大会の上位を独占している。ワルサーLG400は、現在もっとも完成されたエアライフルである。

アメリカのオリンピック・チャンピオンであるMatthew Emmons(マテウー・エモンズ)選手もワルサーLG400を愛用する選手の1人だ。

写真を見て頂ければ分かるとうり、エモンズ選手のワルサーLG400も、アンシュッツ・プレサイス・チークピースにスワップ・チューニングされている。それも当初は、オリジナル・プラスチック製だったものが、リオ・オリンピック直前には木製チークピースに変更された。

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また、50m伏射ランキング1位のMichael Mcphail(マイケル・マクファィル)選手も、オリジナル1813チークピースから、エモンズ選手同様、リオ・オリンピック直前に、プレサイス・チークピースにスワップ・チューニングされた。

他者製品をスワップチューニングする際は、何らかの機械加工が必要となる。特にオリンピック選手が使用するライフルは、0.01mmの精度と強度を要求する。0.01mmを追求するには、キングクラフトのような1台数千万円もする本格的な精密旋盤や、フライス盤を多用しなければ、スワップチューニングは、かなり難しい。

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チークピース調整のワンポイント・アドバイス:

シューター自身は正照準で「ヨシ」と思ってトリガーリリースしたにもかかわらず、フライヤーが上下左右へ、何方か1方向に多く纏(まと)まってフライヤーが多く出る時がある。この様な時は、正照準時にmonocular cues(単眼手がかり)のズレが原因で着弾変移が起きている。方向性のあるフライヤーが多い時は、チークピースの微調整をフライヤーが促しているサインである。

正照準にもかかわらず、

①左へフライヤーが多い場合 : チークピースが9時へ張り出している証拠である。9時へ張り出したチークピースを頭部が押し、撃発した瞬間に、ライフルが左斜め上にマズルジャンプするとフライヤーは左へ出る。

②右へフライヤーが多い場合 : チークピースが3時へ凹んでいる為に、頬付けが甘く、シューター自身は正照準でトリガーリリースしているつもりなのに、monocular cues(単眼手がかり)のズレによる着弾変移が右に起きている。

③上へフライヤーが多い場合 : チークピースが12時へ高く、頬付けがキツく、眼球を圧迫し、頭部でチークピースを強く押さえている為に、マズルジャンプによってフライヤーが上に多く出る。

④下へフライヤーが多い場合 : チークピースが6時へ沈んでいて、マイクロサイトの中心を覗けていない証拠である。頬付けは甘く、monocular cues(単眼手がかり)のズレによる着弾変移が下方向にフライヤーとなって現れる。

⑤上下へ満遍なくフライヤーが多い場合 : これは頬付け位置が毎回、前後にズレている証拠。この時は、往々にしてプルレングス(トリガーからバットプレートの距離)が短いか、長すぎるかの、どちらかである。適正プルレングスになれば、上下フライヤーは1箇所に集弾する。
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チークピースを、あと0.01mmほど動かしたいと思っても、微量調整が出来るチークピースと、出来ないチークピースでは、チークピース自身のメカニズムが、最後に鬼門となる。オリンピック・ファイナルで、あと0.1ポイントで優勝する時、チークピースの0.01mmの微量調整が最も大事なのだ。

現役シューターなら、よ〜くご理解頂けると思う。

以上、

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完成したフレンチ・ウォルナットのプレサイスチークピース。」

                                             

 

機関部、銃身が完成していても、ストック・チークピースの調整で「正確な頬付け」が出来ていなければ、フライヤーだらけになるんですねー。

プルレングス(トリガーとバックプレートの距離)もチークピースの高さもはVSRでは調整できませんしね。

マルイ製M40A5を構えると、凄く撃ちやすいと感じるのは、この2点の調整機能があることが大きいのかもしれませんね。